公演アンケートに皆さんからお寄せいただいた質問にお答えします。

Q1 :登場人物のズボン(袴)の長さは身分を表しているのですか?
長い袴は正装(正式な服装)の一種で、狂言では身分の高い主人や大名は引きずるほど長い袴をはいています。逆に、家来である太郎冠者は短い袴(半袴といいます)をはき、お使いや掃除などいろいろな仕事をするのに動きやすくなっています。


Q2 : 狂言を演じる人は何人くらいいますか?
能や狂言を職業としている人(能楽師・狂言師といいます)の団体として、公益社団法人能楽協会という団体があります。現在、能楽協会には狂言でいうと大蔵流と和泉流という流派の人をあわせて約140人が所属しています。


Q3 : 舞台の背景にある松は何を表しているのですか?
能舞台の正面奥にある板を鏡板といいます。そこに描かれている松は、いろいろな説がありますが、奈良県の春日大社にある「影向の松」をモデルにしているといわれていて、神様がおりたった松の前で、さまざまな芸能を演じ神様を楽しませようと考えられていました。また、松は一年を通して青々とした常緑樹であり、季節を感じさせない、どんな演目にもあう背景と考えられています。


Q4 : 太郎冠者とは召使のことですか?
狂言では、主人や大名に仕えている人を「太郎冠者」と呼びます。主人の外出にお供したり、お使いに行ったりもします。「冠者」ということばは、もともと男子が成人(大人)になることをあらわす儀式<元服>によって、頭に冠をつけた若い男性のことを指します。また、リーダーにあたる人を、一番目という意味の「太郎」、二番目なら「次郎」をつけて、「太郎冠者」「次郎冠者」と狂言では呼びます。


Q5 : どうして下に石があるのですか?
舞台の下まわりに敷いてある白い石の部分を白洲といいます。昔は舞台が野外にあり、庭をへだてた別の建物から舞台を見るのに、この白い石が太陽の光を反射して照明効果になったとも言われています。


Q6 : 狂言を習いたいのですが、どこに教室がありますか?
萬狂言の教室(稽古場)は、豊島区にあります。趣味や特技として習う人、また、初めて狂言にふれる人でも、一から丁寧にお稽古します。稽古日や費用など詳しいことは萬狂言事務局におたずねください。


Q7 : なぜ終わるときに「やるまいぞ」と言うのですか?
逃げていく人が前にいて「ごゆるされませ(許してください)」と言うのを、「やるまいぞ(むこうへやらないぞ)」つまり逃がさないぞと言って、追いかけながら終わることが狂言には多くあります。この終わり方を<追込み>といい、そのあとどうなったかは皆さんの想像におまかせです。


Q8 : 山伏の服についている丸いものは何ですか?
山伏は山で修業をし、特別な力を身につけたお坊さんなので、普通の人とは違う衣装をつけています。頭に兜巾<ときん>をつけ、肩から鈴懸<すずかけ>をかけ、そして丸いふさふさのものは梵天<ぼんてん>といって、神様がそこに宿り力をわけ与えてくれると考えられています。色は白のほかに紫などもあります。


Q9 : なぜ動物の鳴き方が今とちがうのですか?
たとえば犬のなき方は狂言では「びょうびょう」と言います。狂言ができた時代(今から600年くらい前)に、犬は今のようなかわいいペットではなく、人を威嚇するような野良犬ばかりで、鳴く声も怖そうな「びょうびょう」と聞こえたのでしょう。その時代の人の感覚で言葉も変わることがわかりますね。


Q10 : 一人で演じることはありますか?
「見物左衛門」という狂言は、登場人物が一人だけで、最初から最後までずっと一人で演じます。相手役がいないので、とても演技力が必要な狂言といえるでしょう。


Q11 : 黒い着物を着た人が奥に座っているのはなぜですか?
後見といって、小道具の出し入れや、役者の人の着替えなど、舞台上で必要なことのお手伝いをします。また、アクシデントが起きた時にそなえ、舞台の進行を見守っています。



Q12 : アクロバティックな動きはありますか?
狂言の中には、アクロバティックな動きもいくつかあります。側転をしたり、逆立ち、前転(でんぐり返し)のほか、舞台の方から橋掛かりに飛び移る動きもあります。


Q13 : 狂言では台本で練習をするのですか?
台本はありますが、高校生くらいまでは一切使いません。口伝といって先生が実際に言うセリフ、やる動きをまねして繰り返し練習します。台本を使うのは大人になってからですね。


Q14 : 面をつけていて周りが見えますか?
見えることは見えますが視界はせまく、そこからわずかに見える舞台の柱を頼りにして動いたりします。見えなくても思いっきり動けるようにたくさん稽古をしなくてはいけません。


Q15 : 草とか花とか普通は動かない物などどんなものでも表現できるのでしょうか?
そもそも狂言は物真似の芸能といわれるほどで、人間以外のものも多く登場します。「茸」という演目ではキノコが、「菓争」という演目では栗や茄子が出てきます。なんでも人間の想像力で表現すればいいので、どんなものでも表現できるといえるでしょう。


Q16 : 幕の色には意味があるのですか?
ひとつに、中国の陰陽五行説の五行(万物を組成する五つの元素)をあらわしているという説があります。五つの元素とは「木(みどり)・火(あか)・土(黄色)・金(しろ)・水(むらさき)」となります。



Q17 : 練習は何時間くらいするのですか?
人によっても、また練習する曲によっても様々です。先生に稽古をしてもらう時は、一回に30分から一時間くらいが多いです。最も集中力を高めて厳しい稽古をするため、長い時間を使ってすることはありません。



Q18 : 狂言を学ぶ学校などはありますか?
狂言だけを専門に学ぶ学校は今のところありません。たとえば高校の演劇専門コースや、東京藝術大学の邦楽科のように、いくつかの日本の伝統芸能のうちの一つとして狂言を学ぶ形式のものがほとんどです。また、国立能楽堂(独立行政法人日本芸術文化振興会)では、伝統芸能の後継者を育てるための養成事業があります。


Q19 : 装束は昔からのものですか?現代で新しく作ることはありますか?
江戸時代末期や明治・大正の古いものもありますが、大変貴重なもののため、デザインをそのまま写して現代の新しい生地で作るなどしています。一度新しく作ったものは、古くなっても、ほつれやほころびを直して大事に長く使います。


Q20 : 舞台の音響はどのようになっていますか?
能舞台の特徴的な音響といえば、舞台の下に甕(大きな壺のようなもの)がうめられていて、足を踏み鳴らすとその音がよく響き、また背後の松の鏡板は声の反響の役割をします。それ以外は、狂言を演じるときはマイクを使用しませんし、演技の進行にあわせて効果音がスピーカーから流れてくることはなく、すべて役者の人の生の声で表現します。